ひるねゆったりの寝室

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『ハナ 奇跡の46日間』を観た

世が世なら百合作品としてTwitterで騒がれた気がする韓国の卓球映画、
ハナ 奇跡の46日間』を観た。
この直前に別の卓球映画を観た影響で、他にも卓球映画がないかと検索したところ、出てきたのがこの作品だった。
大雑把なストーリーは下記の通り。

1991年に日本で開催された卓球の世界選手権で、韓国と北朝鮮が史上初めて統一チームで参加した実話をベースに描く感動のスポーツ・ドラマ。韓国映画界をけん引する二大女優のハ・ジウォンペ・ドゥナダブル主演作品。 韓国で巻き起こった空前の卓球ブームの立役者ヒョン・ジョンファ選手だったが、彼女の前には中国の圧倒的な壁が立ちはだかっていた。そんな中、1991年4月に日本の幕張で開催される世界選手権に、韓国と北朝鮮は統一チーム“コリア”で参加することが決まるのだが・・・。
※filmarksのあらすじを引用。

もう少し説明を追加すると、こんな感じ。
政治的事情で結成された韓国と北朝鮮合同卓球チームは急造のため、選手たちの仲は険悪。しかし、両国のために勝利をもぎとらねばならない。
彼らは軋轢を乗り越えて強敵中国を破ることができるのか? という流れだ。

この作品において、意外な展開は一切起こらない。
シンプルな筋書きのため、次の波乱への布石が目立つ形で提示され、それが予想通りの内容で回収される。ミスリードもないはずだ。

話の流れはなんとなく読めるものの、しかしこの映画は面白い。
その理由は、
①期待を裏切らない魅力的な「キャラクター同士の関係」が描けているから
②現実に南北対立が存在していて、今も存在するから
であると思う。

キャラクター描写は、まず最初にチラッと触れた百合的な関係。
熱血とまではいかなくとも朗らかなリーダー気質の韓国側主人公。対するは常にクールな面持ちを崩さない北朝鮮側主人公。2人が衝突や危機を乗り越えて、唯一無二の関係を築き上げていくのは、ありがちながらも応援できる展開だ。
2人は決してべったり仲良しではないが、相手の存在をリスペクトしていることは、端々で感じられる。お互いに恋人の不在をほのめかすシーンは、深夜アニメだったら百合要素を匂わせる目配せかと思ったところだ。多分、制作陣は友情や家族愛に類するものだと描いているけど。
主役2人を支えるサブキャラの女性2人もまた熱い友情を築いていて、この4人の描写がかなり多い。百合まではいかなくとも、ガールズムービーの側面が強い作品と言えるだろう(男女の情愛や男同士の友情も描かれている)。

キャラの関係だけ抜き出すと、色んなバディの対立や和解に光を当てたチーム映画だが、忘れてはならないのが彼らの属する国。
韓国と北朝鮮というシビアな対立関係が背後にあることで、彼らが互いを友と認めることの難しさは段違いだ。
この映画が実話をベースにしていることも、作品の説得力を高めている。本編の最後には本人たちが仲良く写った写真も流れ、作中で成立した友情が決して嘘ではないと無言で語りかけてくるのだ。実話に絡んだ話はもうひとつあって、そのビターな雰囲気も、作品の味わいを深めていると思う。

そしてもちろん、キャラの魅力や実話補正だけでなく、映画本編の出来もいい。
意外な展開を排した分、必要な描写は隅まで気合が入っていて、地力のある作品なのが窺える。目力の強い役者が多いのも、作風に合って良かった(特に北朝鮮側主人公役のぺ・ドゥナ!!)。
細部の作り込みで言うと、舞台が日本であるため、変な日本描写が一つもなかったことがその証左になると思う。選手たちが滞在するホテルの名前から、TVから流れるアナウンサーの音声、随所に出てくる日本語掲示、大会会場に飾られるスポンサーの垂れ幕まで、全て違和感なく仕上げられていた。

まっとうに面白いものを、正攻法で作る。
それだけで良い作品ができるのだと、改めて感じさせる映画だった。

 

ハナ 奇跡の46日間 [DVD]

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  • 発売日: 2014/05/02
  • メディア: DVD