ひるねゆったりの寝室

アニメとか漫画とか映画とかの感想を書いていきます

『君たちはどう生きるか』を観た

君たちはどう生きるか』を観た。

 

上映開始早々に、自分の中には『化物語』に書かれたある会話が思い浮かんでいた。

「そうよね。阿良々木くん、ソロコンっぽいもの」

 ソロコン?

 聞き慣れない言葉だった。

「ソロレート婚の略よ。姉妹逆縁婚と言って、奥さんが死んだあと、奥さんの姉だったり妹だったりと結婚することを言うの」

まさか宮﨑駿作品を観ている時に、西尾維新作品の知識が役に立つとは……。

逆縁婚は戦後日本でもままあった、というのもどこかで読んだことがあり、それも補助線として役に立った。

一方で、日本史の知識が求められる局面は少なく、屋敷の中で話が完結している小規模な物語であった。映画後半の舞台となるファンタジー世界も同様で、さまざまな場所が描かれているものの、サッと狭い空間に移動していくので、視覚的にも小規模な物語の感があった。

この小さな箱庭のような作風は、宮﨑作品というよりも、彼以外の監督が手がけたジブリ作品の印象に近い。『借りぐらしのアリエッティ』が一番近いかもしれない。だから、宮﨑作品の総ざらいのようでいて、「ジブリ的なもの」をまとめ上げた作品だと思った。

 

つまり薄味な作品であったのだが、母子関係を中心に据えた部分はそれとは違う熱を感じる。逆縁婚そのものの「タブーな気配」もそうであるし、ひたすらに「継母のナツコは父親の好きな人(であって、自分にとってはそうではない)」と主人公の眞人が強調し続ける頑なさも、心をザワつかせた。

そしてもう一人、ヒミという少女が大きな役割を果たす。彼女が最後におこなった選択は、そのカラッとした表情含めてグサリと刺さり目が潤んだ。とってつけた性急さもある展開なので納得感は薄い。しかし、この作品から自分が何か受け取ったとするならば、間違いなくここだと思うぐらい良い瞬間だった。

 

このように今はだいぶ温度低めに書いているが、観終わった時の「よかった」という感覚は言葉では言い表せないものがあった。熱量高く人に勧めることはせずとも、自分の中でその時の気持ちをとっておきたくなるような、好ましい映画なのだと思う。