ひるねゆったりの寝室

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『きみの色』を観た

きみの色 アニメーションガイド tri-angle

『きみの色』は間口の広い劇場アニメだ。
TVシリーズを前提としない作りはもちろんのこと、キャラクターの動機や内面が極力シンプルで、ストーリーも文化系少年少女の青春を、真っ直ぐに描いている。
色が見えるという特殊設定も、話の枕として重要ながらも、ストーリーの根幹はあくまで”内面の変化”である。

一方で映像は繊細さを大胆に押し出しており、まつ毛と眉の描き方が特徴的なキャラクターデザインや、淡く白っぽいカラーリングが、独特の爽やかな雰囲気を作り出している。
映画を観ている間、まさに「浸る」心地になれる美しい作品だ。

バンドものということで、音楽シーンも面白く作られている。作曲をCubaseのようなソフトで行う様子は当世風だし、テルミンというYoutubeでしか見たことのないような楽器がずっと出ずっぱりなのには驚いた。
よく考えたら、ギター1人にキーボード2人という編成自体がかなり珍しい気がする。
アナログとデジタルを自在に行き来する作曲風景や演奏シーンは、この時代だからこその描写だと思った。

本作において、バンド要素とミッションスクールの設定は、面白い形で交錯している。
一見、反体制と体制側という対立を生みそうなこの二つの要素。
ところが、シスター日吉子はバンド音楽のことを「聖歌」と呼び、決してトツ子やきみの音楽活動を否定しない。トツ子たちもまた、学校への反発を口にすることはない。学校を辞めた立場のきみでさえそうだ。
きみのとある悔いを晴らすようなクライマックスのライブは、その緩やかな学校へのポジティブな感情がなければ成立しなかっただろう。

このように、”激しくない”というのが本作のカラーだ。
殺伐とヒリヒリとするだけが青春ではない。穏やかに、少し波打つぐらいのアニメ映画があっても良い。
そういう一種の居直りを感じる作品であった。


でも、夏休み映画なので、もっとはっちゃけっても良かったと思うんだよな。
鴨川デルタで告白したり、京都駅のホームで告白し返したりする感じのノリでさ。

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