ひるねゆったりの寝室

アニメとか漫画とか映画とかの感想を書いていきます

『すずめの戸締まり』『THE FIRST SLAM DUNK』『かがみの孤城』の雑感

11月12月に観たアニメ映画の雑感。

 

『すずめの戸締まり』

新海誠監督作品の中では一番だと思う。「一番好き」というのとはちょっと違って、「一番いい」と感じた。なぜなら単純に「怖い」。災害描写もそうだし、廃墟の観覧車アクションも「これ、一歩間違えたら死ぬんじゃないの?」という緊張感があって、なかなか心休まらない。物語後半、ストーリーの真の骨格が見えてからは、直接的な怖さはないけど、別の辛さがあった。ラスト直前、鈴芽がある少女と出会って語りかけるところは、悲しくて悲しくて仕方がない。だって、鈴芽が何を言ったところで、起こってしまったことは変えられないんだから。

正直、「鈴芽の明日!」がベストなセリフなのかは僕にはわからなかった。でも、一つのテーマを語り切った強固さはビリビリ伝わってきて、それが「一番いい」と思う理由だ。

小説 すずめの戸締まり (角川文庫)

『THE FIRST SLAM DUNK

原作をほんの少しだけ読んだ程度だったけど、とても面白かった。最初は「リョータの過去がめちゃくちゃ重いんだけど、バスケの試合と関係あるのか?」と引っ掛かりながら見ていた。でもバスケこそ人生、バスケがあるから生きてこれたんだ、というのが段々わかってきて、そこからは回想もバスケシーンも最高に楽しめた。

たかがインターハイの1試合。人生のうちのたった2時間。だけど、今この瞬間が自分の人生の集大成なんだ! みたいな熱量が湘北高校の全員から伝わって(実際にそういいうセリフもある)、すごく入れ込んで観ることができた。

だからどうしても山王高校を破ってほしかったし、湘北の応援団の一人になったような心地だった。

THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE (愛蔵版コミックス)

 

かがみの孤城

自分は不登校にはならなかったけど、いつなってもおかしくない、と思って中学時代を過ごしていた。実際、友達は何人も学校に行けなくなった。映画で言うと萌のポジションに近い。だからこの映画でこころが直面する問題は決して他人事ではなくて、自分がそうなっていたかもしれないもう一つの世界だと思って見ていた。

こころはいじめが理由の不登校だけど、そうでないキャラもいる。でもそれぞれ生きづらいと思っていることは確かで、それが真剣なものだと描かれていたのが胸を打つ。そのおかげで、予告編でも流れる「助け合える」という言葉が何倍もの重みをもって迫ってきて、何度も泣いてしまった。

彼ら一人一人はとてもじゃないが、他人を助けられるような余裕はない。それでも「助け合いたい」んだという強い思いが本当に美しかった。

かがみの孤城 上 (ポプラ文庫)

『ヤマノススメ Next Summit』5話EDのプチ感想

ヤマノススメ Next Summit』はほぼ毎話ED映像が変更される、贅沢なTVシリーズだ。その回でフィーチャーされた人物の、本編では語られなかった余白の一端を知ることができ、毎回ちょっぴり得した気持ちになれる。画面の雰囲気が本編と異なるので、それもまた豪華な印象を与えている。

その中でも第5話は、主人公雪村あおいの母、雪村恵を主役としたED映像が流れ、これが大変泣かせるものだった。

落ち込むあおいを辛抱強く見守る恵。わいわい楽しく過ごすあおいとひなたを見て、学生時代を思い出す恵。自分とあおいを写真に収めようとした夫を驚かせる恵……
という風に、小さなエピソードがいくつも連続している。

恵がいかにあおいを愛しているのかが感じられるのと同時に、子供が成長してしまう寂しさも内包されたEDだと思った。落ち込むあおいを立ち直らせるのが、母親の恵ではなく友人のひなたである、という見せ方が、特に。

一方で、「あおいの母」ではない恵、という余白もまた魅力的だった。学生時代を思い出すのもそうだが、もっとグサッと刺さったのは、若かりし日の誠(夫)とのツーショット写真。二人で登山でもしたのか、自然の中での一枚だ。二人が出会い、恋人になって、結婚して、あおいが生まれて……と人生のステップを歩いてきたことを、何よりも雄弁に語っている一枚絵だと感じた。

そんな歴史の上にあおいは立っているんだなぁ、とその壮大さに涙したのである。

 

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