ひるねゆったりの寝室

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7年後にまた観ます――『空の青さを知る人よ』

『空の青さを知る人よ』を観てきた。

 

観ているうちに分かったのは、これは7年後に観るべき映画、ということだった。

この作品の語り口は、端的に言って静かだ。
細かなギャグはくすりと笑えるし、決して暗い映画ではないのだが、こちらの感情を必要以上に揺さぶろうと仕掛けてはこない。

それが何故かと言えば、この映画が青春の情動を描くものではないからだ。
メインキャラクター4人のうち、半分が31歳。
高校生のキャラから「ババア」「ジジイ」と称される彼等の、どこか擦れてしまった様子が、粛々と描かれていく。

彼等が口に出す葛藤は、何ら特別なものではない。
「こういうこと考えてるんだろうな」というこちらの予想を、そのまま言ってくれることもある。

でもその葛藤は、身に覚えのあるもので、決して「凡庸」と切って捨てることは出来ない。そう、これは特別な4人の話ではなく、本当の意味で等身大の4人の話なのだ。

 

実は、最初に予告を観た時、「今更バンドもの?」と思った。
「地元を出る/出ない」という話も、何だか古臭いなあ、という印象を受けた。

事実、ちょっと古い話ではあると思う。けれど、確かに“今の物語”でもあるのだ。
この映画で描かれる物語は、山に囲まれた田舎町では、ずっと繰り返されているからだ。
町を出たい者、町を出たくない者、町を出られなかった者、町に戻って来た者……
ご多分に洩れず、僕もその一人である。
「こんな町、出て行ってやる」とまでは思っていなかったけど、「ここでずっと暮らすのは無理だ」と思っていた。
そして実際に、今は違うところで暮らしている。

ただ、共感できるほどには、僕はまだ年を取っていない。
劇中の慎之介のように、酸いも甘いも知り尽くしたわけではない。
だから、7年後にまた観たい。慎之介と同じ年になった時には、きっと違う感想を抱くだろうから。
そういう、未来を見せてくれる映画だった。

 

「空の青さを知る人よ」オリジナルサウンドトラック

「空の青さを知る人よ」オリジナルサウンドトラック