ひるねゆったりの寝室

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『花咲くいろは』を観た

第1話 十六歳、春、まだつぼみ

2011年のTVアニメ、『花咲くいろは』を観ました。

ひとつの境地に達しているとか、何か尖った描写があるとか、
そういったタイプの作品ではありません。
むしろ、旅館を題材にした、
オーソドックスな「お仕事ドラマ」を貫徹している、
そういう作品だと思います。

けれど、もちろん他の「お仕事ドラマ」と同様に、
このタイトル独自の個性があります。
そして、それがオーソドックスなドラマと
融和しているのが印象的でした。

 

この作品にとっての(お話の上での)個性は、
「キャラクターの掘り下げ方」だと思います。
2クールあることを活かした群像劇ですから、
当然、各キャラの当番回というのがやってきます。
第7話の巴回や、第18話の菜子回などがその代表ですよね。

個人的に面白く感じたのは、
そこで語られる各々のドラマが、
意外に過去や出発点までは掘り下げないことでした。

菜子のように私生活まで語られるキャラクターは少なく、
リアルタイムの自分自身と向き合う方が
この作品では主流に思います。

結名が「旅館の仕事は大変なだけ」と言っても、
「彼女から見たふくやの仕事」などは映像で示されず、
セリフや過去回の描写から推測することになります。

掘り下げがメインとなっていた劇場版でも、
緒花の父がどうして亡くなったのかまでは描きません。
主人公の緒花ですら「孝一との出会い」は描写が無いですし、
明確に「ここまでは描く/ここからは描かない」という
ラインがあったのではないか……と勝手に想像しています。

 

では描写不足なのかといえばそんなこともなく、
喜翆荘を舞台にした「お仕事ドラマ」としては、
過不足なく要素が揃っているといえます。

もっと言えば、緒花以外のキャラクターの掘り下げ方に、
偏りが出なかったことで、
喜翆荘という「場」を描くことに成功しているように思いました。

あくまでも現在の彼らと喜翆荘の関係に描写を絞ることで、
「喜翆荘を舞台にした群像劇」として物語がまとまり、
そして、そのさっぱりした空気感が、
花咲くいろは』だけの個性を生んでいるのです。

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