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『徒然チルドレン』6巻は、過去最高に面白い!!

【ネタバレあり】

8月17日に『徒然チルドレン』6巻が発売された。

3年半ほど前から追っている身からすると、感慨深い内容になっていた。

そして、一番面白かったと言っていい。

その理由を説明していきたい。

 

『徒然チルドレン』は若林稔弥が2012年にインターネット上で連載を始めたラブコメ4コマ漫画である。それが月刊少年マガジンを経て、今は週刊少年マガジンで連載している。

この漫画は「両想いの二人が、勘違いとすれ違いを繰り返す群像劇」だ(例外はある)。

1つのエピソードが4コマ×約11本で構成されており、基本的には1話完結だ。色んな組合せの「二人」がいるため、様々なカップリングを楽しむ事ができるのが特徴だ。

劇中では早々にくっつくカップルとそうでないカップルがおり、前者は付き合ってからのイチャイチャや喧嘩を、後者は友達以上恋人未満の甘酸っぱい空気を醸し出している。人によっては読みながら吐血してしまうほどの青春濃度の濃さだ。

6巻の帯には「付き合う前のドキドキと付き合ってからのドキドキを。」とあるが、まさにその通りの作品である。

 

6巻が他の巻と明確に異なるのは、二つの中編が挿入されていることだ。

従来、『徒然チルドレン』ではエピソードを跨ぐ形で繋がっている話はあっても、それらは一度別の「二人」のエピソードを挟んでからコミックスに掲載されており、あくまでも別個のエピソードという形をとっていた。

しかし、今回は時系列が完全につながる短編の連続掲載が二回行われている。

一つは「渚」というタイトルの4つの短編(+前日譚)で一つになるエピソード。

もう一つが「君をつれて」という3つの短編(+前日譚)が繋がっているエピソード。

ナンバリングで区切られているが、中身も掲載順も直接つながっているため、実質中編の扱いだ。

この二つのエピソードが作品全体を大きく盛り上げる役割を果たしている。

 

 

まずは「渚」だ。

このエピソードの中心となる「二人」は、高野千鶴菅原卓郎だ。6話と言う早期登場にも関わらず、全然くっつかない。そのすれ違いっぷりは作中で最もドラマチックだ。

まず菅原は高野に好意を抱いているが、高野はそもそも恋愛自体に興味が無い。初期は無表情に近く、菅原が告白しても激励だと勘違いする鈍感キャラだった。それが菅原と交流していくうちにその人柄に惹かれ、恋心が芽生えるようになる(表情も豊かになっていく)。しかし本人はそれを恋だと自覚できず、悶々としている。菅原の方も一度高野を諦めようとするも諦めきれず、これまた悶々としている。

まるでカタツムリのような歩みの二人が、ついに海に遊びに行く! というのが「渚」のストーリー。

「渚」は高野と菅原だけでなく、クラスが同じキャラ達も登場し、とても賑やかなエピソードだ。周りが何とかくっつけようと仕掛けるも、上手く行かない。菅原から高野へ告白イベントがあるものの、「聞こえなかった」というお約束でまた流れてしまう。しかし、あの無表情だった高野が汗を飛ばしたり、赤面したり、ときめいたりし続ける25ページは圧巻だ! 

 

もう一つの中編「君をつれて」。

こちらは作中で唯一「ブサイク」だと明言されている山根隆夫と、その山根に恋する美少女・栗原ちよが中心となる。この二人のエピソードの際、忘れてはならないのが、山根の親友・本山友道だ(彼もまたブサイク)。山根と栗原はお互いに好き合っているものの、あと一歩の勇気が出ず告白に至っていない。特に山根は自身の顔面にコンプレックスを持っており、「まさか栗原さんが自分のこと好きなわけないよ」と卑屈まっしぐら。本山はそんな二人をじれったく思っており、いつも背中を押そうと応援している。そしてその応援が空回りに終わるのが毎回のお約束だ。

「君をつれて」では、栗原から「夏休み、遊びに行きませんか」と誘われた山根がコミックマーケットに連れて行く。本山も参加し、あの手この手で二人きりにしてあげようと奔走する。いつも通り栗原からの好意に「気づかないふり」をしようとした山根だが、逆にそれを栗原に気づかれ、返事をしなければならない状況に追い込まれる。自分のいいところを見せて、上手く場を作ってから告白しようとする山根だが、その意に反して思い切りかっこ悪いところを見せてしまう。自分の情けなさに凹む山根に、栗原がある言葉をかける。その言葉に心を打たれ、山根はついに告白する。

ここでは型破りの見開き6ページが使用されるが、全然かっこよくない。泣きながらの告白が見開きで映し出される。しかし、そこに胸を打たれる。

そもそも最初のエピソードのオチは「栗原からの告白を、場のプレッシャーに耐えられず遮ってしまうヘタレ山根」というものだった。その山根の最高にかっこいい見せ場だったと言えるだろう。

 

 

この二つの中編が6巻では大きな紙幅を占めているが、他のエピソードも隙がない。

第2話から引っ張り続けた古屋・皆川組がついに結ばれる「ピュア」「実感」、

前巻で大きな転換点を迎えた千葉・桐原組と冴島・相馬組の「お手伝い」「トラウマ」、

コメディ色の強い「プリン」「LとR」「来ちゃった」、

イチャイチャ度が天井知らずの「どうにも止まらない」「初恋クレイジー」、

ちょっと変化を迎える「誓い」「アクアリウム」。

『徒然チルドレン』のあらゆる要素を過不足なく配置し、なおかつ中盤に「渚」、一番最後に「君をつれて」を掲載することで、読んでいる側のテンションが巻末で最高潮になるようにしている。オムニバスの短編集を読んでいるのに、単行本1冊分の長編を読んだ時に近い感覚を覚えた。

 

『徒然チルドレン』の6巻は、ストーリー漫画のような緩急があり、エピソードを多く繋げた事で深みもある。その構成力の高さは、間違いなく過去最高だと言えるだろう。

7巻以降も非常に楽しみだ。

 

 

ところで、私の一番好きな「二人」は、皆川さんと古屋くんである。

そういう意味でも6巻は最高だったのだ。

 

 

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